東京地方裁判所 昭和47年(借チ)3016号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔主文〕申立人が別紙目録記載の土地について同目録記載の借地権を譲受けることを許可する。
申立人は相手方に対し金三〇万円を支払え。
本件借地契約の賃料を本裁判確定の日の翌月分から金二、八〇三円に改定する。
〔決定理由〕一 本件の資料によれば、……申立人が本件借地権を譲受けても相手方に不利となるおそれはないものと認められる。なお、申立人が主張する本件賃貸借契約の内容は、同人が建物競落人であるため必ずしも明確でない部分もないではないが、相手方が本件審問期日に出頭せず、また答弁書等の書面を提出しないことから、相手方において申立人の右主張に特に異議はないものと認め、前記のとおり事実を認定した。よつて、本件申立は許可すべきである。
二 附随処分について検討する。
鑑定委員会は、本件申立を認容するに当り、当事者双方の利害の調整を図るため、申立人に対し財産上の給付を命ずべきこと、その額は、本件土地の更地価格が3.3平方米当り四〇万円、近隣の比準による借地権割合は七五%で三〇万円、本件建物は昭和三四年の建築でその物理的耐用年数二四年のうち経過年数一三年、残存耐用年数一一年、したがつて、耐用命数がきれるまでの借地権価格は三〇万円の11/24、よつて、本件土地の借地権価格は右に土地面積を乗じた二、二〇二、七〇五円となる。さらに本件建物は賃貸中であつて、いわゆる借家権が発生しており、その価格は九六一、二〇〇円である、以上の数字を基礎に給付額を近隣の慣行に従つて試算すると(1)借地権価格の一〇%相当額二二〇、二七五円、または(2)借地権価格から借家権価格を差引いた額の一五%相当額一八六、二三二円となり、本件給付額は右(1)(2)の平均的中傭値二〇三、〇〇〇円をもつて相当とする、というにある。
当裁判所も本件申立を認容するに当り申立人に対し財産上の給付を命ずべきものと考えるが、その額の算定についての鑑定委員会の意見には次の疑問がある。まず第一に、鑑定委員会は、本件借地の借地権価格の算定に当り、本件建物の推定耐用年数を基礎にして経過年数に従つて、借地権価格が比例的に低落することを前提としている。なるほど期間の定めのない借地契約において、借地上の建物が朽廃により消滅すれば借地権は消滅し、その時点で価格は零になり、従つて、建物の朽廃時期が近ずくにしたがつて借地権価格が低下するとの考えは肯首できるが、一方、借地上の建物は借地期間中に補修されるのが通常であり、また場合によつては改築も可能であることを考えると、新築建物の推定耐用年数を基礎として、経過年数に従がい毎年比例的に借地権価格が低下するとの見解はとうてい肯首できない。次に、鑑定委員会は財産上の給付額の試算に当り、借地権価格から本件建物の借家権価格を差引いた額を基礎として計算している。しかしながら、借地上にどのような建物を建築するか、これをどのように使用するか(自己使用か、賃貸か)は借地人側の事情によるもので土地賃貸人にとつて無関係の事柄である。
かりに、建物を賃貸することにより借家人に借り得分つまり借家権価格が生ずるとしても、建物賃貸人は権利金を授受し、敷金を運用する等ある程度資本の回収をなし得る立場にあり、この未回収分をその一部であつても土地賃貸人の負担に帰せしめる合理的理由は見出しがたいうえ、たまたま借地上の建物が賃貸されているか否かによつて、本件申立事件のような場合に財産上の給付額に差異をつけるのは公平に反するように思われる。
もつとも、当裁判所も借地上の建物の有無、種類、新旧等によつて借地権価格が影響を受けること(いわゆる建付地減価)は認めるものであり、本件借地の借地権価格は本件資料により認められる諸事情を考慮し、更地価格三、三〇五七平方米当り四〇万円(鑑定委員会の意見による)の六〇%、これに借地面積を乗じた合計三、八四四、八〇〇円と認めるのが相当である。そして、財産上の給付額は鑑定委員会の意見を参考にして、右借地権価格の約八%に当る三〇万円をもつて相当と認める。
地代については、鑑定委員会の意見のとおり、本裁判の確定の日の翌月分から一ケ月二、八〇三円に改める。
目録<略> (河村直樹)